外務省の金杉憲治アジア大洋州局長と韓国外交省の鄭炳元(チョンビョンウォン)・東北アジア局長がソウルで9日、慰安婦問題の日韓合意に基づいて韓国政府が設立した「和解・癒やし財団」の事業の内容をめぐって協議した。金杉氏は終了後、「一定の進展があった」と記者団に語った。
金杉氏は、具体的な進展の内容について説明は避けた。今後は協議結果をそれぞれ政府の上層部に報告し、引き続き、日韓で連携していくことを確認したという。日韓合意に基づいて日本政府が財団に拠出する10億円については「タイミングなどは未定だ」と述べた。
財団の事業をめぐっては、元慰安婦と遺族に一定額を支給する案が韓国側では検討されている。名目としては「癒やし金」などが取りざたされているが、日本政府には「賠償金」と受け止められないかとの懸念が出ている。日本政府としては、賠償問題は1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場からだ。
金杉氏は元慰安婦らへの直接支給については「日韓請求権協定についての我々の立場は変わっていない」と述べるにとどめた。
韓国の聯合ニュースが7日に報じた財団の金兌玄(キムテヒョン)理事長のインタビューによると、事業は韓国政府に登録された元慰安婦238人と、韓国政府機関に被害者と認定され、すでに亡くなっている7人の計245人を対象に行われるという。金氏はこのほか、被害者の「慰霊塔」を建てる案などもあることを説明したほか、理事に歴史学者や女性学者を追加する考えも示した。
一方、韓国の最大野党「共に民主党」の文在寅(ムンジェイン)前代表が7月25日、島根県の竹島(韓国名・独島〈トクト〉)に上陸した問題について、金杉氏は9日の局長協議で韓国側に抗議した。(ソウル=東岡徹)