先制して盛り上がる嘉手納の一塁側アルプス席=11日午後、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場、西村圭史撮影
(11日、高校野球 嘉手納10―3前橋育英)
選手の目の色が変わる 初出場・嘉手納に横浜から名参謀
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「ピュイ、ピュイ」という指笛の音とともに甲子園が揺れた。初出場の嘉手納(沖縄)が沖縄ゆかりの関西の人たちも含めた大応援の後押しに乗って、前橋育英(群馬)に10―3で逆転勝ち。「名参謀」の見立ても覆してみせた。
2点差の七回、一塁側アルプス席では「ハイサイおじさん」が鳴りやまなかった。得点機になると流れる沖縄勢の応援の定番曲。9長短打の猛攻で8点を挙げた大逆転劇を後押しした。
演奏したのは市尼崎(兵庫)の吹奏楽部員だ。総監督が沖縄出身。指笛担当の実重(さねしげ)誠君(2年)は、はっきり音が鳴るまで1週間かけて練習した。「球場全体を包むようで鳥肌が立った」と嘉手納の主将の大石哲汰君(3年)も驚いた。
今夏は市尼崎も甲子園に出場したが、9日に敗退した。その野球部の3年生15人も応援に駆けつけた。主将の前田大輝(ひろき)君(3年)は「自分たちの試合にも嘉手納の選手が応援に来てくれたお礼です」。嘉手納の野球部員は地元で新人戦に臨んでいるため、スタンドにはマネジャーを含めて5人だけだった。控え部員で応援団長の幸地隆輝(こうちりゅうき)君(3年)は「たくさん応援に来てくれてびっくりした。本当に感謝しかない」。
嘉手納は今月に入り、コーチや部長として横浜(神奈川)を春夏3回の優勝に導き、「名参謀」と呼ばれた小倉清一郎さん(72)を臨時コーチに迎え、指導を受けている。練習ではミスが目立ち、「10回やって1回勝てるかどうか」と評されたが、助言を受け続けた。
主将の大石君は、その成果で「高めの球を見極められた」と話した。群馬大会の映像を見て、前橋育英の対戦相手が高めの球に手を出している点に注目した。
この日は3失策とミスも出たが、それ以上に集中打が光った。大蔵宗元監督は「乗れば強い。点数が入ってから、いつもの彼らの踊るような姿だった」。3回戦へ一番乗りを果たした。(西村圭史、伊藤繭莉)