横浜対履正社の好カードを見ようと、夜になっても席が埋まったままの甲子園球場=14日、兵庫県西宮市、伊藤進之介撮影
優勝候補との呼び声高い東西の「横綱」が、2回戦で早くも激突。14日の大会第8日第4試合で、履正社(大阪)が、春夏の甲子園5回の優勝を数える横浜(神奈川)を5―1で破った。阪神甲子園球場には朝から長蛇の列ができ、大観衆が熱戦に見入っていた。
動画もニュースも「バーチャル高校野球」
「清宮フィーバー以上の大入りだ」。昨夏の早稲田実(西東京)の清宮幸太郎君(2年)人気を引き合いに出し、大会本部の関係者がうなった。入場券を求める人々の列は朝から100メートル以上離れた阪神甲子園駅の手前まで続いた。観客席は次々と埋まり、第1試合は4万4千人、第2、3試合は各4万7千人を記録。試合後に帰る人が少なかった。新たに入りきれなかった人たちに外野席下の通路を歩いてもらう「通り抜け」が今大会初めて実施された。
大観衆のお目当ての一つは、ともに150キロ近い速球をもつ大会屈指のエース同士の投げ合いだった。
履正社の左腕寺島成輝君(3年)と横浜の右腕藤平尚真君(3年)。気合が入ると1球ごとに声を上げ、闘志を前に出す強気の寺島君に対し、藤平君は笑顔を絶やさずマウンドではポーカーフェース。2人は通信アプリLINE(ライン)でやりとりする仲。甲子園出場を決めると「最後の夏に出られて良かった」と喜び合った。
寺島君は1年の夏からマウンドを任されたが甲子園は遠かった。新チームで主将となり、責任を1人で背負ってしまった。今春以降は試合のリーダー役を四川雄翔(よつがわゆうと)君(3年)に委ねた。「チーム主将」と「試合主将」の制度ができた。チームに一体感が生まれた。春の近畿大会を制して勢いづいた。大阪大会では投打がかみ合い相手を圧倒した。
一方の横浜の藤平君はエースとして迎えた昨夏の神奈川大会決勝で東海大相模を相手に2回4失点で負けた。選抜大会出場をかけた昨秋の関東大会でも初戦敗退。今春は背番号1を奪われた。再び「1」を背負った夏の神奈川大会で活躍。捕手の徳田優大君(3年)は「のほほんとしているけど投球の時は目つきが変わる」と言う。
この日の試合。履正社には別に好投手がいるが、岡田龍生(たつお)監督(55)は「彼が先発しなければ世間が納得しないでしょう」と取材に語り、寺島君をマウンドに送り出した。一方の横浜は背番号10の左腕石川達也君(3年)が先発登板した。
履正社打線が二回に火を噴き、藤平君をマウンドに引きずり出した。その後は投手戦となり、最後は履正社に軍配が上がった。寺島君は「大歓声に力をもらえた。甲子園で最高の相手と戦えて楽しかった」と語った。
二回に雷雨で計1時間23分の中断をはさんだが、途中で帰る人は限定的で、五回時点で発表された観衆は3万8千人。午前6時前から並んで入場券を購入した三重県松阪市の会社員佐波(さば)英一さん(60)は「大会ナンバーワンと呼ばれる左腕と右腕の投げ合いを見られて良かった」と話した。