2003年の鹿児島県議選で公職選挙法違反罪に問われた被告全員の無罪が確定した「志布志事件」をめぐり、逮捕・起訴されなかった住民に対する県警の取り調べの違法性を認め、県に賠償金の支払いを命じた福岡高裁宮崎支部の控訴審判決について、県警は16日、上告しないと発表した。住民側は17日に上告するか方針を決める。
5日の控訴審判決は、住民らの嫌疑が低かったにもかかわらず、長時間続いた取り調べについて「社会通念上、相当と認められる限度を明らかに逸脱していた」と認定。原告7人のうち3人に計184万円を支払うよう県に命じた一審の鹿児島地裁判決を変更し、控訴した6人全員に1人につき60万~115万円、計595万円を支払うよう県に命じた。
県警は上告断念の理由について、住民に一定の嫌疑があったことから捜査を始めたことが控訴審判決で認められ、裁判の長期化による双方の負担を避けるため、などと説明。有馬晋作首席監察官は「控訴審の判決内容を真摯(しんし)に受けとめ、上告しないこととした。引き続き、緻密(ちみつ)かつ適正な捜査の徹底に努める」とのコメントを発表した。
住民側弁護団の野平康博弁護士は「県警が上告しないのは当然。違法な取り調べなどと認定された部分について、謝罪するべきだ」と指摘。「原因を究明し、再発防止の取り組みが必要」と話した。住民らは17日、上告するかどうか話し合うという。(島崎周、斉藤明美)