刺繡で「攻めの守備」とつづられた明徳義塾主将の高村和志君のグラブ=兵庫県西宮市
夏の甲子園は20日、いよいよ準決勝を迎える。球児はグラブや帽子に言葉を記し、決意を胸にプレーしている。4強の北海(南北海道)、作新学院(栃木)、明徳義塾(高知)、秀岳館(熊本)の主力選手にその言葉への思いと、準決勝への意気込みを聞いた。
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88年ぶりに4強入りした、北海のエースで主将、大西健斗君(3年)はグラブに「家族」と刺繡(ししゅう)している。「自分にとってのエネルギー源だから」という。
昨夏の甲子園開幕戦で大西君は途中登板したが、3失点で降板。チームの悲願の初戦突破はならなかった。悔しさを忘れないように、その時の写真を自宅に飾っている。「今度は成長した自分の写真を飾りたい」と再び甲子園に乗り込み、3試合を一人で投げ抜いた。「応援してくれる家族のためにも、最後まで悔いのないようプレーしたい」と話し、初の決勝進出を目指す。
作新学院の中軸として、これまでの3試合すべてで本塁打を放った入江大生君(3年)。「笑顔と感謝」と帽子のつばに書いた。
きっかけは友達からもらった手紙だった。栃木大会前に手渡された手紙には「この二つの言葉を忘れるな」と書かれていた。「大切なものを気づかされた」と話す。試合中に帽子を見ては「支えてくれた仲間や母親、コーチや監督の顔が浮かんで頑張ろうという気持ちになる」という。
明徳義塾の遊撃手で主将の高村和志君(3年)はグラブに「攻めの守備」と刺繡をしている。
昨秋の四国大会決勝で守備位置を後ろにとりすぎて自らの失策が絡んで失点し、優勝を逃した。気持ちを強く持って前に出て守備をするため、グラブに刺繡をした。甲子園での3試合でチームの失策は一つだけ。「守備からリズムがつくれている。この調子を維持して勝ち進みたい」
強力打線、秀岳館の4番で主将の九鬼(くき)隆平君(3年)の帽子のつばには、仲間からの言葉がぎっしり書き込まれている。「野球の鬼」「日本一!!」。中でもよく見返す言葉がある。
「おれをホームにかえしてくれ 大河」。1番か2番を打つ松尾大河君(3年)が書いた。3回戦のいなべ総合(三重)戦の九回2死、二塁には松尾君がいた。帽子のつばを見てから打席に向かい、二塁打を放ち松尾君を生還させた。「松尾が出塁したら、必ずかえしたい」と意気込む。