2020年東京五輪・パラリンピック招致をめぐる資金提供問題で、日本オリンピック委員会(JOC)の調査チーム(座長・早川吉尚弁護士)は1日、大会招致委員会が支払った約2億3千万円のコンサルタント料に違法性はなく、国際オリンピック委員会(IOC)の倫理規定にも違反しないとする調査報告書を公表した。
招致委は13年の招致決定前後の2度にわたり、IOC委員だったラミン・ディアク国際陸上競技連盟前会長の息子で、コンサルタントのパパマッサタ・ディアク氏と関係が深いとされるシンガポールの「ブラック・タイディングズ(BT)」社に対し、コンサルタント料として計約2億3千万円を支払った。この金について仏検察当局は、IOC委員に影響力のあったディアク氏側に渡って集票目的の贈賄資金に使われた可能性があるとみて捜査している。
報告書は、招致委や日本側の関係者はBT社とパパマッサタ氏の間に親交があるなどという事実は承知しておらず、また、金銭の使い道まで認識することはできなかったとして、五輪関係者らに対する贈与の認識はなかったと認定。契約金額も相対的に高額だが不当に高いとは言えず、BT社の報告書はIOC委員の具体的な投票行動に言及していることから、同社が相応のロビー活動をしていたと推認。日本の法律や仏の刑法、IOC倫理規定には反しないとした。
一方、報告書は、招致委理事長だったJOCの竹田恒和会長が最初の契約を決裁する際、成功報酬を別途支払う内容だとの説明を事務方から受けていなかったと指摘。「手続きの透明性の観点から一定の問題がある」とした。
この資金提供問題は仏検察当局による国際陸連のドーピング隠しの捜査の過程で浮上し、5月に「汚職などがなかったかを調べる」と公表。竹田会長は国会で「正当な業務契約に基づくもので、違法性はない」と説明していた。(阿久津篤史)
■調査報告書の骨子
●シンガポールの「ブラック・タイディングズ社(BT社)」に支払ったコンサルタント料は想定予算を大きく超え、相対的に高額だが、不当とまでは言えない
●BT社との最初の契約の際、事務方からは成功報酬を別途支払う内容であることが招致委の竹田恒和理事長(当時)に説明されておらず、手続きの透明性の観点から一定の問題がある
●招致関係者はBT社とパパマッサタ・ディアク氏に親交があることを知らず、契約の際にも贈与の認識はなかった。コンサルタント契約の内容や締結過程は日本の法律や仏の刑法に違反することはなく、国際オリンピック委員会(IOC)倫理規定の違反も見いだせない
●招致委は各所出身者で構成される寄り合い所帯的な雰囲気を呈していて、意思疎通が不十分だった。その結果、契約内容や締結過程で様々な疑惑や疑念を抱かれることになった