各社の主な歴史マンガ(日本史)
出版不況の中、歴史漫画が売れに売れている。「老舗」の出版社がシリーズの改訂版を出せば、新規参入組は人気漫画家を起用するなど、歴史漫画市場は「戦国時代」の様相だ。人気の理由は?
東京都武蔵村山市のオリオン書房イオンモールむさし村山店は、2月の改装で学習漫画や図鑑の棚を大幅に増やした。小学3年の木口賢人君(8)は「織田信長の漫画がわかりやすくて面白かったので次を買いに来た」。父淳一さん(49)は「家でゲームばかりしていたが、いまは夢中で読んでいる」と満足そうだ。児童書担当の渡辺美幸さんは「最近は漫画でも勉強に役立つという認識に変わってきている」と話す。
火付け役は、2013年に出た「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話」(KADOKAWA、通称「ビリギャル」)だ。この中で小中学生向けの「学習まんが少年少女日本の歴史」(小学館)が「偏差値30の子に効果的な日本史の学習法」として紹介され、昨年5月に映画化されるとさらにその「効果」が広まった。
小学館によると、ビリギャル発売以後、大学受験生やその親らから問い合わせが連日のようにあるといい、「対象が確実に拡大した」(担当者)。ネットからのセット販売(全23巻)は昨年、ビリギャル前の11年に比べて10倍。14年比でも2倍になったという。
■人気漫画家を起用
従来、学習漫画の「日本の歴史」シリーズは、小学館、集英社、学研の3社が多くの読者をつかんできた。昨年6月、KADOKAWAが市場に参戦し、累計200万部を突破する爆発的なヒットに。担当の石井康予さんは「徹底した子ども目線」を意識したという。持ち運びしやすいようにソフトカバーにし、判型も一回り小型の四六判に。表紙は「ケロロ軍曹」の吉崎観音さんや「DEATH NOTE」の小畑健さんら人気漫画家が描いた。
集英社も18年ぶりの改訂で巻き返しを図る。漫画「キングダム」の作者、原泰久さんらに表紙イラストを依頼。カラーページも大幅に増やして10月に発売する。朝日新聞出版も3月から「歴史漫画サバイバル」シリーズを販売。すでに累計38万5千部に達した。
大手出版取次の日本出版販売(日販)によると、歴史漫画を含む児童書の売り上げはここ数年、前年度比5%前後の減少が続いてきたが、昨年7月に前年同月比でプラスに転じ、昨年度は約6%増になった。