今月の金融政策決定会合で行う「総括的な検証」について講演で話す日本銀行の黒田東彦(はるひこ)総裁=5日、東京都千代田区
日本銀行の黒田東彦(はるひこ)総裁は5日都内で講演し、20~21日の金融政策決定会合で行う金融緩和の総括的な検証について「緩和の縮小という方向の議論ではない」と述べ、2%の物価上昇目標の実現へ向けた検証だと強調した。「量・質・金利の各次元で拡大は十分可能で、それ以外のアイデアも議論の俎上(そじょう)からはずすべきではない」とも語り、追加の金融緩和に踏み込む可能性も示唆した。
黒田氏は金融緩和が「経済好転に大きな役割を果たしている」とし、「『物価が持続的に下落する』という意味でのデフレではなくなっている」と述べた。現在の物価低迷は原油安や消費増税、海外経済の減速が影響しているとした。
マイナス金利政策は金利低下の効果があった一方、「金融機関の収益に与える影響が相対的に大きい」とした。今後は「マイナス金利の深掘りも、『量』の拡大もまだ十分可能」とも述べ、状況に応じてマイナス金利幅を拡大する可能性にも言及した。
講演後、東京外国為替市場では50銭ほど円高ドル安が進み、一時1ドル=103円台半ばをつけた。「追加緩和への踏み込みが想定より弱い」(大手証券)との見方が出て、円金利が下がらないとみた投資家が円を買ったためとみられる。(藤田知也)