急カーブで濁流があふれた
台風10号の豪雨災害で15人が死亡した岩手県岩泉町の山間部で、同時多発的に土石流が発生し、川の蛇行であふれた濁流が高齢者施設を襲った可能性が高いことが、専門家の現地調査で分かった。初めて東北の太平洋側に上陸した台風が記録的な雨を降らせ、保水力のない山地が崩れて被害拡大につながったとみられている。
岩手大理工学部の大河原正文准教授(地盤工学)によると、9人が死亡した高齢者施設「楽(ら)ん楽(ら)ん」の近くを流れる小本(おもと)川の約10キロ上流で、幅60~100メートルにわたって沢筋が崩れているのが確認された。直径10~20センチの大量の石が小本川に流れ込んでいたという。
岩泉町が位置する北上山地は花崗岩(かこうがん)や粘板岩など硬い岩で構成されるが、「長い年月で風化が進んで表面に亀裂が走っており、保水力がないため雨水で崩れやすい状態だった」と大河原准教授は解説する。
同じく現地調査した岩手大理工学部の小笠原敏記准教授(水工学)は、高齢者施設から約1キロ上流の、小本川が蛇行する地点で濁流があふれ、施設の方向に向かったと指摘する。施設の約200メートル上流には巨岩があり、濁流がぶつかって施設の方向に川の流れが変わったことも被害を大きくしたと分析している。
台風10号は1951年の統計…