復旧した堤防には決壊地点であることが分かる数字が記された。その向こうに更地が広がる=茨城県常総市上三坂地区
「関東・東北豪雨」により、茨城県常総市の鬼怒川で堤防が決壊してから、10日で1年たった。国の堤防改修工事は着々と進むが、いまも約200人が避難生活を送り、決壊現場で自宅を失った10戸はまだ1戸も再建されていない。住宅の取り壊しや商店の閉鎖も続き、復興への道は遠い。一方で、住民らの防災意識は水害を機に高まっている。
「この年では銀行はなかなか金を貸してくれない」
堤防が決壊した常総市上三坂地区に8月下旬、自宅を失った10家族の多くが集まり、7月に初当選したばかりの神達岳志市長と話し合った。茨城県つくば市の県営アパートで避難生活を送る羽鳥明夫さん(63)は、他の自宅流失家族同様に再建資金に苦しむ。復旧された堤防の先には、広大な更地が広がったままだ。
羽鳥さんが受けられる公的支援は、被災者生活再建支援制度による支援金100万円と、県や市の義援金など計約200万円。自宅が再建できればあと200万円追加されるが、1千万円以上かかる資金には到底足りない。
家が流失しても、公的支援は1階天井まで浸水した「全壊」と同じ分類。羽鳥さんは神達市長に流失世帯への独自支援を求めたが、市は特別扱いに慎重だ。
高齢化と人口流出に悩んでいた常総市に、水害は追い打ちをかけた。市によると2人が死亡し、住宅被害は全壊53戸、大規模半壊1581戸、半壊も3484戸。床上、床下浸水を加えると、被害は全戸の約4割の8300戸余に及んだ。水害後に900人ほどが市外へ転出、今も茨城県坂東市やつくば市などで約200人が避難生活を送る。市商工会によると、製造業や小売業など約40会員の事業者が廃業した。農作物の被害も約14億円に達した。
市の復興策への取り組みは鈍い…