310キロをあげたシアマンド・ラーマン=リオ中央体育館、坂本進撮影
健常者の記録を超える――。単純比較はできないが、これまでのパラリンピックでは想像できなかった数字をたたき出すパラアスリートが出てきた。
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14日のパワーリフティング会場。地鳴りのような観客の足踏みと大歓声の中、107キロ超級のシアマンド・ラーマン(イラン)が、車いすに乗ってベンチプレスの台に向かった。この日、最後となる4回目は310キロを設定。ほぼ同じルールで競う健常者の最高記録を、35キロ上回る。
重りに対して、少したわんだ「シャフト」と呼ばれる鉄の棒。胸まで下ろし、絶叫しながら、2秒足らずで持ち上げた。
大記録達成の理由について、コーチはこう言う。「本来なら下半身にいくはずの血液や栄養が上半身に集約され、筋肉などがより発達。さらに上半身しか使えないことで神経が研ぎ澄まされ、脳からの指令伝達も早まるのです」
幼少期、小児ポリオにかかり、下半身が不自由になった。体重は約175キロ、腕回り65センチ、胸回りは150センチを超える。大会前の自己ベストは296キロ。週5日の練習はすべて、300キロの大台をあげるために強化してきた。自らの世界記録を大きく塗り替え、「とても光栄。東京大会ではもっと持ち上げたい」。
11日の陸上男子1500メートル(視覚障害)では、リオ五輪の優勝タイム(3分50秒00)を上回る選手が4人も出た。五輪では、順位を巡る駆け引きでスローペースの展開だったが、目が不自由な走者が争ったパラリンピックではスタートから各走者はエンジン全開。最後の直線で逃げ切ったアブデラティフ・バカ(アルジェリア)は、3分48秒29。五輪の優勝タイムよりも約2秒近く速く、パラリンピックの世界記録となった。「簡単な金メダルではなかった」と話した。
17日夜(日本時間18日朝)には、8メートル40の自己記録を持つ男子走り幅跳びのマルクス・レーム(独)が登場。直前のリオ五輪の優勝記録8メートル38センチを上回れるかどうか、注目を集める。(坂本進、榊原一生)