被災住宅では親族だけで泥出しをしていた=12日、岩手県岩泉町、大賀有紀子撮影
8月末に上陸した台風10号で19人が死亡した岩手県岩泉町で、災害復旧ボランティアが不足している。住民からは「人手が足りない」と悲鳴が上がるが、交通事情の悪さなどから支援が行き届いていない。
山間部の安家(あっか)地区。8月30日の豪雨で安家川が氾濫(はんらん)し、2週間以上たった今も1階の天井まで泥が堆積(たいせき)したままの民家がある。
菊地孝子さん(70)は自宅などの泥出し作業を夫の秀定さん(71)と2人でこなす。「畑に流れ込んだ冷蔵庫や大きな柱は私たちだけでは運べない。若い力を借りたい」と話す。
岩泉町災害ボランティアセンターを運営する町社会福祉協議会によると、1日から16日までに参加したボランティアは延べ2381人。休日は約350人が集まるが平日は約100人。385件の支援要請のうち完了は2割程度だ。
三陸海岸沿いの岩泉町へ盛岡市から行く交通手段は車やバスのみで約2時間かかる。宿泊施設も少なく利便性はよくない。伊達勝身町長は「遠隔地にあることが、ボランティアが少ない理由の一つだろう」と話す。町は24時間利用できる休憩施設を設置するなど受け入れ態勢を整えて対応し始めた。
台風10号による16日現在の岩手県全体の被害は死者20人、行方不明3人。被害総額は現時点で約1057億円。岩手県の台風被害としては戦後最悪となった。
ボランティアの問い合わせは町社協(0194・22・3400または090・7079・6035)。(大賀有紀子)