吉川英治(1892~1962)。自宅の書斎
■文豪の朗読
《吉川英治が読む「新・平家物語」 本郷和人が聴く》
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平清盛はまぎれもない「おぼっちゃま」である。祖父も父も豊かな国の国司(知事にあたるが公然と税収を私物化できる)を歴任し、美麗な寺院をドン!と上皇たちに献上した。そんな名家の若様が、この朗読で語られる如(ごと)く、いかがわしい区域に出入りしたり、みみっちい金策の使い走りをするわけがない。
作者・吉川英治は、小説はフィクションなのだから全く正当なやり方だが、明らかに「うそ」をついている。でもそれは、この長大な小説の中から、わざわざ朗読の場面に選ばれる程(ほど)の、大切な「うそ」であった。そこにはどんな事情があったのか。
『新・平家物語』は1950年…