国際通貨基金(IMF)は4日、最新の世界経済見通しを公表した。日本の成長率見通しは、消費増税の先送りや今夏に打ち出した経済対策などを受け、7月の前回予想から引き上げた。米国経済の減速や英国の欧州連合(EU)からの離脱決定で先進国全体の見通しは引き下げたものの、新興国の予想は引き上げており、世界全体の成長率見通しは据え置いた。
日本の今年の成長率見通しは前回から0・2ポイント引き上げて0・5%に、来年の見通しは0・5ポイント引き上げて0・6%とした。それでも、主要7カ国(G7)では最も低い成長率で、「人口減少などを反映し、日本の中期的な見通しは弱いままだ」と指摘している。
世界全体の成長率見通しは今年が3・1%、来年が3・4%で、それぞれ据え置いた。米国の今年の見通しは、企業による設備投資の低迷などによる年前半の減速を受けて0・6ポイント引き下げ、1・6%とした。ロシアやインドなど新興国の見通しは引き上げた。
IMFはここ数カ月で高まったリスクとして、「政治的な不協和音や内向きな政策」などを挙げた。6月の英国のEUからの離脱決定や、11月の米大統領選での議論が「国境を超えた経済統合の恩恵への民意のほころびを示している」と指摘。保護主義的な風潮が強まれば、企業による投資や雇用、貿易などに悪影響を与えると警告した。(ワシントン=五十嵐大介)