米国のミュージシャンで作詞家のボブ・ディランさんへのノーベル文学賞授賞が発表された13日、米国でも歓迎ムードが広がった。オバマ大統領はツイッターで「私が最も好きな詩人の一人」と表現し祝福した。一方、インタビュー嫌いで知られる本人はコメントを発表していない。
特集:ボブ・ディラン
米国ではノーベル賞の注目度は高くない。米メディアは授賞発表を速報で伝えたが、CNNなどは短く報じただけで、主に大統領選関連の放送を続けた。
だが米国の多くのポピュラー歌手の中でも、ディランは抜きんでた存在感がある。半世紀以上にわたるキャリアの間でいくつもの有名曲が生まれ、時に難解な歌詞は大学の授業で教えられ、裁判の判決文で引用されたこともある。「風がどっちに吹いているのかを知るために、気象予報士はいらない」「法の外で生きるためには、正直でなければならない」といったフレーズは社会の中に溶け込んでいる。
1993年にノーベル文学賞を受賞した米作家のトニ・モリスンさんは歓迎の声明を出し、英作家サルマン・ラシュディさんは「吟遊詩人の伝統の見事な伝承者。素晴らしい選択だ」とツイート。米作家のスティーブン・キングさんもツイッターで「歓喜している」と発信。「低俗さと悲しさの季節の中で、素晴らしく、いいことだ」とコメントし、スキャンダル合戦が続く大統領選にも重ね合わせた。
他方、「文学」に注目が集まらないことを残念がる声もあった。「トレインスポッティング」などで知られる英作家のアービン・ウェルシュさんは「私はディランのファンだが、十分に考えられていないノスタルジーの授賞だ」と批判。米紙ニューヨーク・タイムズは「唯一の問題は、なぜこんなに時間がかかったのかだ」と歓迎する音楽評論家の原稿を載せる一方、「世界で読書量が減るなか、文学の賞は以前よりも大切になっている」という論説委員のコラムを掲載し、「ディラン氏はノーベル文学賞を必要としていないが、文学はノーベル賞を必要としている。今年は賞を得られない」と結んだ。(ニューヨーク=中井大助)