事故があった里道。女児は線路の手前から向こう側へ渡ろうとしてはねられたとみられる=長崎県佐世保市瀬戸越3丁目、福岡泰雄撮影
25日午前9時30分ごろ、長崎県佐世保市瀬戸越(せとごえ)3丁目の松浦鉄道の線路上で近くの女児(2)が列車にはねられた。女児は病院に運ばれたが意識不明の重体。乗客37人にけがはなかった。現場は遮断機がなく、住民が線路を渡るために使っている場所で、踏切ではない。県警は、線路の先にいた母親の元に向かおうとした女児が線路を渡り、列車にはねられたとみて調べている。
県警や第三セクターの松浦鉄道などによると、列車は伊万里(佐賀県伊万里市)発佐世保行きの1両編成。現場は泉福寺駅のホーム端から約30メートルの線路上で、列車の進行方向の左側に母親がいて、右側にいた女児が線路を渡ろうとしていたため、ブレーキをかけたが間に合わなかったという。
現場は佐世保市の市有地で、住民が普段から線路を渡って行き来している場所。線路に上る幅約2メートルの道路や階段が線路横にある。佐世保市によると、こうした場所は「里道(りどう)」などと呼ばれる。
松浦鉄道によると、同社が運行する約94キロ(佐賀県有田町の有田駅~佐世保駅)に里道は約250カ所ある。同社は「通行禁止にはできず、注意喚起に努めている」という。今回の現場にも「通行危険」と赤い文字で書いた看板を設置。この現場での人身事故は初めてという。(福岡泰雄)
■「勝手踏切」全国に1万9千カ所
今回の里道と同様に、踏切以外の線路上を住民らが通行する場所は全国にある。国土交通省によると、「勝手踏切」と呼ばれることが多い。国交省が今年3月、全国の鉄道事業者を対象に調べたところ、勝手踏切は少なくとも1万9千カ所あった。把握していない事業者もおり、実態はさらに多いとみられる。
鉄道営業法では線路の通行は踏切に限られ、それ以外は勝手踏切も含めて横断が禁止されている。また、国交省令は線路内への立ち入り防止策を鉄道事業者に求めている。国交省の担当者は「鉄道事業者は利用者や自治体と話し合いながら、出入りを防ぐ柵の設置など、さらなる安全策を進めてほしい」と話す。(岩田智博)