名古屋市バスの運転手だった山田明さん(当時37)が自殺したのは過労や上司によるパワーハラスメントが原因だとして、山田さんの遺族が25日、名古屋市を相手取り、約8758万円の損害賠償を求めて名古屋地裁に提訴した。
訴状によると、山田さんは2007年2月以降、上司から「葬式の司会のようなアナウンスはやめろ」などと指導されたほか、過重な時間外労働を強いられた。さらに、乗客の転倒事故が山田さんの運転で起きたとして警察に出頭させられた。否認していた山田さんは同年6月に焼身自殺。遺族は「市は誤った指導や違法なパワハラを防止せず放置した」と主張。安全配慮義務違反を訴えている。
この問題を巡っては、遺族が13年に公務災害の認定を求めて提訴。名古屋高裁は今年4月、事故は山田さんの運転によるものとは認めず、「不適切な言葉での指導などで強い精神的負荷を受けた」などとして公務災害を認定し、地方公務員災害補償基金が遺族一時金を支払った。
弁護団によると、謝罪を求めた遺族に対し、市側は「一連の指導には問題がなかった」と回答したという。原告で父の勇さん(76)は「公務災害で亡くなったのに謝罪もなく憤慨している」と語った。市交通局は「訴状が届いておらずコメントできない」としている。