宮内庁の西村泰彦次長は7日の定例会見で、天皇陛下の「公務を大幅に減らすのは難しい」との認識を示した。天皇陛下の退位などを話し合う政府の有識者会議(座長=今井敬・経団連名誉会長)が、天皇の公務縮小についても提言する見通しであることに対し、事前に事情を説明した形だ。
西村次長は、陛下の公務が増えた背景として、昭和天皇の時代と比べて国連の加盟国数が2倍以上に増加し、在京外国大使や、外国に赴任する日本大使が急増した点を指摘。国内で国際会議が数多く開催されるなど、結果的に陛下の公務が増えたと説明した。
宮内庁があえて説明した背景には、天皇陛下が自ら率先して公務を増やしているわけではないということを伝える狙いがある。
天皇陛下は憲法に定められた「国事行為」だけでなく、大使らからあいさつを受ける拝謁(はいえつ)、行事・式典出席などの「公的行為」に精力的に取り組むことで、象徴天皇としてのあり方を模索してきた。
だが、憲法で「国事行為のみを行う」と定められていることから、「公的行為はどこまで必要か整理した方がいい」との見方が専門家などに広がっている。
これに対し、天皇陛下は8月に表明したお気持ちで「天皇の高齢化に伴う対処の仕方が、国事行為や、その象徴としての行為を限りなく縮小していくことには、無理があろうと思われます」と公務軽減について否定的な考えを示した。
宮内庁はこれまで負担軽減を模索してきたが、今後は陛下の意向を尊重する方針だ。同庁の西村次長は「お務めの現状を正しく理解して欲しい」と訴え、「現時点で(陛下の)公務を大幅に減らすのは難しい」と繰り返した。
一方で、過密な日程が続き、陛下の健康が危惧される場面も目立つ。「宮内庁としては特例法にしろ皇室典範の改正にしろ、陛下のご年齢を考慮して、(退位についての)議論を急いで欲しいのがお仕えするものの総意だ」と話した。