米ワシントンのホワイトハウスで10日、大統領選で当選したトランプ氏(左)と握手するオバマ大統領=AP
米大統領選の勝利から一夜明けた共和党ドナルド・トランプ氏(70)は9日、日本など少なくとも11カ国の首脳と電話会談するなど、来年1月の政権移行に向けた準備を本格化させた。安倍晋三首相とは日米関係をさらに強化させ、17日にニューヨークで会談する方向で一致。10日にはホワイトハウスを訪問し、今後の政権移行についてオバマ大統領と会談した。
タイムライン:トランプ氏、大統領選勝利への歩み
特集:米大統領選2016
日本政府によると、安倍首相から9日夜(日本時間10日朝)に電話し、トランプ氏と約20分間会談した。大統領選勝利への祝意を伝え、トランプ氏は「首相の今日までの業績を高く評価している。今後数年間、ともに働くことを楽しみにしている。日米関係は卓越したパートナーシップであり、この特別な関係をさらに強化していきたい」と答えたという。
首相は「世界の経済成長の中心であるアジア太平洋地域の平和と安定は米国の力の源泉であり、強固な日米同盟はこの地域の平和と安定を下支えする不可欠な存在だ」と強調。在日米軍の駐留経費問題や環太平洋経済連携協定(TPP)は話題にならなかったという。首相がペルーで19~20日にあるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議へ出席する前にニューヨークを訪問し、会談することで調整に入った。
トランプ氏は韓国の朴槿恵(パククネ)大統領とも電話で協議。朴氏は、北朝鮮による軍事挑発の可能性にも言及し、米韓の緊密な協力と強力な制裁の継続を訴えたという。韓国大統領府によると、米韓同盟を発展・強化させたいと訴えた朴氏の発言にトランプ氏は「100%同意する」と応じた。「米国は韓国を防衛する強力な体制を維持する。揺らぐことなく、米韓安保のために最後までともに進む」とも語った。
トランプ氏は大統領選の際に、米軍駐留費を巡る日本や韓国の負担増を要求。受け入れられなければ米軍の撤退や日韓の核武装容認もほのめかすなど、日韓では懸念が広がっていた。トランプ氏は今回、あえて同盟の重要性を強調したが、その真意や詳細は明らかになっていない。
また、これまで移民問題などでやり玉に挙げてきたメキシコのペニャニエト大統領とも電話で協議して「未来のための信頼関係構築」で一致。このほかトルコやイスラエル、豪州などの首脳とも電話会談した。
トランプ氏は9日、共和党のライアン下院議長やマコネル上院院内総務とも電話で会談。マコネル氏は同日の記者会見で、トランプ氏が廃止を主張するオバマ大統領の医療保険制度改革(オバマケア)について「疑いなく誤りだ」と述べ、廃止に向けて協力する考えを強調した。10日にはライアン下院議長(共和党)とも会って協議する。 一方、オバマ大統領は9日の記者会見で「我々はこの国を団結させ、成功に導いていく責任がある。平和的な政権移行が民主主義の証しだ」と述べ、政権の引き継ぎに関し、10日にトランプ氏と会談することを明らかにしていた。(ワシントン=佐藤武嗣)