10月23日に殺処分されたメスのツキノワグマ(青梅市猟友会提供)
東京都青梅市でツキノワグマが相次いで出没している。8日には、JR青梅線の御嶽駅から約200メートル東の多摩川左岸に、親子と見られるクマ3頭が現れた。翌9日には直線距離で3キロほど多摩川を下ったJR二俣尾駅付近に3頭が出没。10日には同駅の北東約3キロの住宅地近くの道路を横切る1頭の目撃情報があり、同日夕に体重60キロのメスを地元猟友会が殺処分した。
特集:クマ出没
8、9両日の3頭が同一のクマか分かっていないが、紅葉狩りや秋のハイキングシーズンの最盛期を迎え、専門家は「非常に危険な状態だ」と注意を呼びかけている。
青梅市では、10月下旬にもクマが連日出没する騒ぎがあったばかり。同月22日には120キロのオスが、翌23日には80キロのメスが殺処分された。いずれも住宅地で、青梅市によると、記録が残っている過去10年間で、ここまで民家に近い場所でクマが確認されたのは初めてという。
10月に殺処分された1頭目のオスは、同月中旬から近くの飲食店で食材を荒らしたクマとみられる。22日早朝から市職員と地元猟友会のメンバーが捜索にあたり、茂みから出てきたところを射殺した。
2頭目のメスは、1頭目を射殺した直後に、現場から約4キロ下流の多摩川河川敷にクマが逃げていった、という通報があった。翌23日朝に発見、射殺した。
ツキノワグマの生態に詳しい「日本ツキノワグマ研究所」の米田(まいた)一彦理事長は、1頭目のオスの大きさに注目する。「120キロというと、野生のツキノワグマのほぼ最大級。強いクマは、山奥の最高の場所を占拠するもの」という。そんなクマが住宅地に現れるというのは「ドングリなどの食料がよほど不足しているのだろう」とみる。
米田理事長は「雪が降れば、クマは一斉に冬眠に入る。栄養状態が悪い年ほど冬眠は早い。クマの出没は、いずれ終息する」と前置きしつつも、「まだ、いつどこで遭遇するか全く予断は許さないだろう」と話す。
クマ対策で最も大切なことは遭遇しないことで、米田理事長によると、市販されている高い音が出る「クマ鈴」を身につけ、人がいることをクマに知らせることが有効だという。万一、遭遇してしまった場合は、背中を向けたり、腕を左右に動かしたりすることが、最も危険だという。クマは動くものに反応し、相手が自分より弱いと判断すると、襲ってくる危険が高まる。「背を向けず、声を上げずにゆっくりと後ずさりして距離をとってください」と注意を呼びかけている。(抜井規泰)