JR長崎駅近くのバスターミナルでは、旅行客やビジネスマンらが高速バスの切符売り場の前に列を作った=11日午前11時48分、長崎市大黒町、真野啓太撮影
JR鹿児島線などで11日早朝に起きた停電トラブルは各地で通勤や通学客を直撃した。運転見合わせ区間は時を追うごとに拡大し、影響は福岡県だけでなく九州北部の広範囲に及んだ。
JR鹿児島線と長崎線で架線損傷 九州各地で運休や遅れ
鹿児島線の運転見合わせが続いた博多駅(福岡市)では午前10時過ぎ、改札前に大勢の通勤客らが足止めされ、払戻窓口に長蛇の列ができるなど大混雑した。改札前ではJR九州の社員が拡声機を使い、「復旧にはかなりの時間を要します。お客様には大変ご迷惑をおかけします」と繰り返し説明した。
佐賀大学での講義に向かう途中だった九州大学大学院の田中俊也教授は「このままでは休講しなければいけない。補講の日取りも考えないと」と困った様子。
12日に佐賀県鳥栖市であるサッカーJ1・サガン鳥栖の試合を観戦するため、神奈川県横須賀市から来た女性(65)は50分間ほど改札前で待たされ、新幹線とタクシーで移動することにした。「タクシーが使える距離だと聞いたので」と、疲れた表情で話した。
福岡市早良区の大学3年、石橋隆さん(21)は授業の開始時間が迫り、「単位を取らないと困る時期なのに、どうやって大学に行けばいいのか。タクシーで行くことも考えます」。
鹿児島線と日豊線が乗り入れる小倉駅(北九州市)の改札周辺では正午ごろ、60人ほどが情報を求めて集まった。
「ただいま門司港駅から博多駅間のすべての列車の運行を見合わせています」。駅員がアナウンスする中、集まった人たちは電光掲示板に流れる遅延情報を見ながら途方に暮れていた。同市小倉南区の女子大学生(19)は「八幡まで通学するのに30分くらい待っています。授業に遅れそう。ここまで動かないのは初めてです」と困った表情で話した。
長崎線と佐世保線が分岐する肥前山口駅(佐賀県江北町)の構内では、情報を待つ人たちが集まり、「バスを出せ!」などと駅員に迫る人もいた。駅前では、佐賀市方面に向かうバスを待つ人の列ができた。同県武雄市の会社員女性(49)は、通勤のため武雄温泉駅から佐賀駅に行く予定だったが、約1時間半足止めされていた。「通勤だけで疲れてしまった。こんなこと初めてだ」と話していた。
長崎線のダイヤが乱れた長崎駅(長崎市)の駅前も、電光掲示板を見つめたり運行状況を確認したりする人で混雑した。長崎市内で当直勤務を終え、長崎県大村市の自宅に帰る途中だった50代の公務員男性は「帰ってから旅行に出かける予定だったのに」。
駅近くのバスターミナルは、高速バスに乗り換えようとする人が集まり、切符売り場は数十人が列をなした。千葉県印西市から長崎へ来ていた50代の会社員女性は午前9時台の特急に乗ったが途中で運行が止まり、降りて引き返してきた。「バスの切符が買えるか心配。JRは代替輸送手段を確保してほしい」と話した。