かかしを作る「なにかし隊」のメンバーら。手前は完成したかかし=福島県楢葉町、諫山卓弥撮影
東京電力福島第一原発の事故で、全町避難を強いられた福島県楢葉町で、町民たちが、かかし作りと町内への設置を進めている。昨年9月に避難指示は解除されたが、町に戻ったのは11月4日現在で718人で、帰還率は1割未満だ。そんな町内を少しでもにぎやかにしようと、6月から活動を続けている。
町民約30人のボランティアグループ「なにかし隊」メンバーを中心に、女性5人が製作を担当している。町内の元小学校を利用した施設に月1回集まり、綿を詰めた頭部と木製の枠、新聞紙を束ねた手足を組み合わせてかかしを作る。衣服を着せると、2歳から85歳までの個性的なかかしが出来上がった。
これまでに28体を完成させ、町のイベントに出展した際に、町民たちから名前を付けてもらった。全員の「戸籍」も作っている。うち十数体が金融機関や、デイサービス施設など、7カ所に置かれた。介護予防教室では、体操に「参加」するなど、好評だという。メンバーの高原カネ子さん(68)は、「かかしが受け入れられ、見た人が笑顔になればいい」と話す。
町では震災前、小学2校と中学1校に686人が通っていた。学校は来春、再開の予定だが、子育て世代がどれくらい戻ってくるのか分からない。
メンバーは来春までに、昔のにぎやかな結婚式をかかしで再現する企画を進めている。また、認定こども園が町内で再開すれば、そこにも、子どものかかしを置けないか計画している。(諫山卓弥)