菌従属栄養植物のイメージ
鹿児島県の屋久島やその周辺の島々で、新種の植物の発見が相次いでいる。いずれも光合成をせず、キノコなどから栄養を奪って生きる「菌従属栄養植物」という珍しい仲間だ。葉もなく、小さい花をひっそりと咲かせる目立たない植物の姿を、森を撮り続ける地元の写真家と若手の植物生態学者のコンビが探し出している。
■はうように観察
40年にわたって島の写真を撮り続けている鹿児島県屋久島町在住の写真家、山下大明さん(61)は昨秋、屋久島だけに自生する菌従属栄養植物「ヤクノヒナホシ」を見せようと、植物生態学が専門の末次健司・神戸大特命講師(29)を連れて暗い樹林を歩いた。大きさが5ミリほどの青い宝石の粒のような花が、地面から顔をのぞかせるように咲く。2006年に山下さんが発見した新種だ。
しかし、末次さんは近くで群生していた別の菌従属栄養植物に見入り始めた。高さ3センチほどの茎の上に紫色の丸い粒のような花を咲かせる。島でしばしば見かける絶滅危惧種のホンゴンソウだと山下さんは思っていたが、末次さんは花にぐっと顔を近づけて言った。
「これは違う種類かもしれない」
末次さんが大学に持ち帰って調べたところ、花の色の違いや雌花の構造の特徴から、ホンゴンソウに似た別の種類と判明。新種の「ヤクシマソウ」と名付け、今年2月に発表した。
2人は今月にも、屋久島で見つけた新種「タブガワムヨウラン」の論文を学術誌に発表した。長さ数センチの花びら6枚のうち5枚が白色、唇の形をした1枚が紫色なのが特徴だ。
屋久島で多くの植物の写真を撮…