欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁
欧州中央銀行(ECB)は8日の理事会で、国債などを買って市場にお金を流す量的緩和政策の実施期間を9カ月間延長し、少なくとも来年12月末まで続けることを決めた。ただ、来年4月から国債などの購入規模を現在の月800億ユーロ(約9兆7600億円)から月600億ユーロに減らす。ECBは拡大を続けてきた量的緩和の方向を転換する。
主要中央銀行では、米連邦準備制度理事会(FRB)が2013年12月に量的緩和の縮小を決定。15年12月に9年半ぶりに利上げに踏み切り、今月13~14日の連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利上げするとみられている。ECBはFRBに続き、緩和縮小にかじを切る形だ。ただ、ECBは8日の声明で、市場の状況などで物価が上がらない場合は、買い入れ規模の再拡大や実施期間の延長をする考えも示した。
ECBは15年3月から量的緩和を始めた。買い入れ規模は今年4月、当初の月600億ユーロから月800億ユーロに増額した。ドラギ総裁は理事会後の記者会見で、量的緩和の規模を今後も段階的に縮小することについて「今日は議論していない」と述べた。
欧州市場では発表直後はユーロが買われ、円に対して発表前より1円あまり円安ユーロ高の1ユーロ=123円台前半をつけた。しかし、ドラギ氏の発言を受け円高ユーロ安に転じ、1ユーロ=121円台前半につけるなど不安定な動きになった。
買い入れ規模の縮小を決めた背景には、物価上昇が緩やかに続いていることがある。11月のユーロ圏のインフレ率(速報値)は前年同月比0・6%で、ECBが目安とする「2%弱」を下回るが、マイナス0・2%だった4月以降は改善が続いている。(ロンドン=寺西和男)