日本銀行の黒田東彦総裁
■黒田東彦(はるひこ)・日本銀行総裁
1年を象徴する言葉として(英国の)オックスフォード・ディクショナリーでは「post-truth」、つまり心情に訴えかける状況が世論に大きな影響を与えることを表す言葉が選ばれた。今年を振り返ると、国際情勢の不確実性が経済に大きな影響を与えた1年だった。
(英国は)EU(欧州連合)離脱の入り口のさらに手前で議論が続いている。米国の新政権の政策もはっきりしない。イタリアは現政権の退陣が決まり、来年はフランスとドイツで選挙がある。国際情勢の不確実性の高い問題がまだ続く。
そうした不安定な状態のもとで、ややもすると人々が過度に不安になったり慎重になったりする。人々の感情や心情が経済や市場に大きな影響を与える要素であるのは事実。だが、同時に客観的なデータと分析にもとづいて経済の現状を的確に把握し、今後の進むべき政策について議論することも大切だ。
経済データにはよい面、悪い面が混在するが、全体では世界経済も日本経済もよい方向に向いている。日本経済がデフレから完全に脱却し、物価安定のもとで持続的な成長をとげるまで、まさにいまが正念場。政府は引き続き規制改革、規制緩和、成長戦略を進めている。企業のみなさんにはぜひ、物的・人的投資をさらに積極的に進めていただきたい。(都内での「年末エコノミスト懇親会」で)