国際NGO「LUMOS」代表のジョルジェット・ムルヘアさん=英国・ロンドン
保護が必要な子どもに対し、家庭的な養育の場を増やし、「脱施設化」の活動を世界23カ国で進めてきた国際NGO「LUMOS(ルーモス)」代表のジョルジェット・ムルヘアさん(48)に、理念と課題を聞きました。
特集「子どもと貧困」
――「脱施設化」に取り組んだきっかけは。
私は英国の小規模施設の職員でした。3人が交代で子ども6人をケアしていました。虐待のトラウマで少女がひどく苦しんでいても、私は勤務が終われば帰り、翌日は別の職員が世話をする毎日。一貫性のある安定した1対1の愛着が結べない限界を感じました。
彼らは「施設の子」としての偏見にもさらされ、お金の管理や自炊経験も一般家庭の子より乏しくなる。愛情に飢えて、さらなる虐待や性的搾取の対象になる子を多く見てきました。施設で暮らす子は世界で約800万人いますが、福祉や医療を改善し実親の元に帰したり、家庭的な養育環境を提供したりすることをめざしています。
――施設から家庭的な環境への移行を、各国でどう進めたのですか。
政府と連携し、困難な家庭を地域で支える仕組みづくりを進めています。まず施設の職員に再教育を受けてもらい、豊富な知識や経験を生かした里親、家庭支援員、教員や看護師として、家庭的な養育の支え手になってもらいます。
政府や自治体のトップの説得も大切です。私たちは説得の材料として、コスト削減の結果を見せます。例えばモルドバでは、地域で支援する費用は、施設費の12%。脱施設の取り組みで節約できた予算を地域の家族や障害児支援、学校教育の予算に配分できました。
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