活版印刷機で作業する従業員=16日、東京都港区、金居達朗撮影
年賀状シーズンのこの時期、活版印刷の魅力を楽しむ人が増えている。速くて均質なオフセット印刷やインターネット上での文書のやりとりが普及する中で廃れたが、インクのにじみや凹凸感など、活字が持つ独特の温かみや質感の魅力が見直されているという。
特殊印刷を得意とする「河内屋」(東京都港区)にはこの時期、年賀状を活版印刷で依頼する注文が殺到する。代表取締役の国沢良祐さん(48)によると、4、5年前から、年賀状やチラシなどの印刷で、紙ならではの質感を生かした活版印刷や、箔(はく)押し、厚盛り加工といった特殊印刷の依頼が増えたという。「ウェブ上で手軽に告知できる時代に『わざわざ紙で印刷するなら』と付加価値を求めているのだろう」と話す。
「自宅で手軽に活版印刷が楽しめる」とうたったキットも人気だ。文字や画像をパソコンで作成して特殊な樹脂などで型を取り、簡易なプレス機に通すと名刺やメッセージカードなどが刷れる。1万円前後からネットなどで販売されている。通販サイト「すたんぷつくーる!」を運営する佐々木伸也さん(44)によると、2014年の販売開始から、デザイン会社や美術大学などから100台ほどの注文があった。「印刷関連のイベントや、凝ったあいさつ状などの作成に使われているようだ」と話す。
大手印刷会社もブームを意識する。大日本印刷(東京都新宿区)は13年から、活版印刷に特有のインクのにじみを表現した新書体の開発に着手。先月、9354文字のデジタルフォント「にじみ明朝」を完成させた。今月6日から、「謹賀新年」「酉(とり)」など年賀状用のデータをホームページ上で無料提供している。
同社は03年、オフセット印刷…