石垣を公開するための安全対策の例
歴史が刻まれた文化財の価値をできるだけ損なわずに、どう耐震化することができるのか。熊本城では2年前の熊本地震で石垣があちこちで崩れており、多くの観光客が巻き込まれて死傷するおそれがあった。各地で安全対策を強化しようと試行錯誤が続いている。
年間200万人近い観光客が訪れていた熊本城。今も地震で崩れた石垣や傾いた櫓(やぐら)が至るところに残る。熊本市の担当者は「地震が日中だったら、100人超の死傷者が出ていたかもしれない」と話す。
熊本城は、「武者返し」と称される石垣を含む一帯が、国宝級の価値を持つ国の特別史跡だ。櫓や門など13棟が国の重要文化財に指定されていた。2棟が石垣ごと倒壊。11棟も傾くなどした。3月末に市がまとめた復旧基本計画では、復旧には20年の工期と600億円以上のお金がかかる。
元の材料を元の場所に戻して地震前の状態に復元するのを原則としつつも、「耐震化のため最新技術や現代工法」を使うことも盛り込み、文化財の価値を守ることと安全性の確保の両立をめざす。市熊本城調査研究センターの渡辺勝彦所長(建築史)は「(柱の間を斜めの部材で補強する)筋交(すじか)いを入れるといった工夫は明治時代にも各地であった。時代時代で補強していかないと、地震国では建物が残っていかない」と語る。
課題は石垣だ。地震に耐えられる構造かを計算する方法が確立している建物と違い、どうすれば耐震化できるかはっきりしていない。文化庁の担当者は「工学的な議論がほとんど進んでいない。熊本城で議論を進めて、方針を示したい」と話す。
安全と文化財保護のバランスを考えて補強されたのが、国宝の姫路城(兵庫県姫路市)だ。
国宝や重要文化財は、耐震基準…