朝日新聞社は27日、読売巨人軍の新人契約金報道をめぐる名誉毀損(きそん)訴訟に関連して、朝日新聞社が判決などの際に出したコメントの削除を求めた巨人軍の申し入れに対し、「是正すべき点はない」と回答した。
巨人、契約金報道で申し立て 朝日「報道と人権委」に
巨人軍契約巡る記事根幹「真実」 朝日新聞の賠償も確定
問題とされたコメントは、巨人軍が朝日新聞社に損害賠償を求めた訴訟の東京高裁判決(6月)と最高裁決定(11月)の際に公表した。「記事の主要部分について判決は真実だと認めました」などとした点について、巨人軍は今月22日の申し入れで「高裁判決と最高裁決定を歪曲(わいきょく)し、誤った印象を読者に与える」として、削除を求めていた。
これに対し、朝日新聞社は、高裁判決が「巨人軍が6選手と最高標準額を上回る36億円を支払う契約を結んだ」との記載について「記事の相当部分を占める事実」とし、名誉毀損が成立しないと判断した、と指摘。一部敗訴した部分も含めて判決の内容を報じており、コメントを削除する必要はないと回答した。
裁判で対象とされたのは2012年3月15、16日付朝刊記事。巨人軍が球界で申し合わせた新人契約金の最高標準額を超える契約を6人の選手と結び、合計額は36億円、超過額は27億円だった、などと報じた。
高裁判決は「6選手と36億円を支払う契約をしていた」との部分は「真実性の証明がある」と認定。一方で、日本野球機構が厳重注意処分にした他球団の事例に触れた記述について名誉毀損と判断した。巨人軍と朝日新聞社は上告受理を申し立てたが、最高裁は受理しない決定をしたため、高裁判決が確定した。
■読売巨人軍への回答は以下の通り
2016年12月22日付の御社からの申し入れについて、検討いたしましたが、読売巨人軍が弊社を訴えた訴訟に対する、東京高等裁判所の判決並びに最高裁判所の決定についての弊社広報部のコメントは、是正すべき点はなく、削除する必要はないと考えます。
以下、その理由を説明します。
まず、2012年3月15日付朝刊記事、同16日付朝刊記事での読売巨人軍に関する報道が「読売巨人軍が6選手と最高標準額を上回る契約金を支払う契約を結んでいた」ことを主要な内容としていることは、それらの紙面を見ていただければ明らかです。各記事の見出しやリード(前文)の記述からも、それは明白です。記事末尾の横浜球団の部分は、読者にこの問題を考えていただく事例として、最高標準額を超える契約を結んでいた事実を紹介したものに過ぎません。
さらに、この点については、読売新聞も、2016年12月23日付朝刊社会面の「朝日人権委に訂正要求」の記事が、これらの報道の内容について「朝日は2012年3月15日と16日の朝刊で、巨人軍が1997~2004年度、新人6選手と当時のプロ野球界の申し合わせ(最高標準額)を計27億円超えて契約金36億円を支払う契約を結んでいたなどと報じた」と要約しており、このことを記事の主要な内容と捉えておられたと十分、推察されることを指摘しておきたいと思います。
付言すれば、申入書で御社が、弊社記事の「主要部分又(また)は根幹部分」だと主張されている「読売巨人軍と6選手との契約の一部は横浜球団の那須野選手の事例と同様に日本野球機構(NPB)の厳重注意処分に相当する行為である」との事実については、一審・東京地裁での審理では争点になっておらず、判決でも、この部分に関する言及はありませんでした。
また、二審・東京高等裁判所は、5500万円の請求に対して、330万円の支払いを命じる一方、
・「読売巨人軍が6選手との間で、最高標準額を大幅に超過する契約金合計36億円を支払う旨の契約を締結していた」との事実については、真実性の証明がある。
・また、6選手への契約金額は最高標準額を大きく超過するものであるから、「契約金の高騰抑制目的を逸脱するもので、金にものを言わせた金権野球である」との論評も、論評の前提となる事実について真実性の証明がある。したがって、名誉毀損(きそん)とはならない。
との判断を示し、上記の「本件記事の相当部分を占める」事実には名誉毀損が成立しないとして、謝罪広告の必要性を認めませんでした。
従って、2016年6月9日付朝刊および同年11月26日付朝刊に掲載された「朝日新聞社広報部のコメント」に是正すべき点はありません。
訴訟で、記事の主要部分については弊社の主張が認められた一方、他球団選手の事例に触れた記述に関する主張が認められなかったのは残念ですが、判決の内容を、2016年6月9日付朝刊記事および同年11月26日付朝刊記事で一部敗訴部分も含めて報じ、報道機関として公正に対応しています。
回答は以上です。