なぜ一年中しめ縄? 天草など独自の風習
熊本県の天草地域を歩くと、民家の玄関先やスーパーの入り口などに一年中、しめ縄が飾られていることに気づく。「なぜ?」。天草市立本渡歴史民俗資料館に最も多く寄せられる質問だという。
しめ縄は神道の道具の一つで、邪気の侵入を防ぐ境界を示し、家に年神(としがみ)様を迎えるためのものだ。「橙(だいだい)」などの縁起物の飾りをつけたものをしめ飾りといい、広く全国で15日前後に行われる「どんど焼き」の際に、門松などと一緒に燃やされることが多い。
一方、年間を通じてしめ縄を飾る天草地域は、1566年にポルトガル人宣教師ルイス・デ・アルメイダによってキリスト教が伝わり、江戸幕府の禁教政策による弾圧下でも信者がひそかに信仰を守ってきた土地として知られる。
天草市天草町の山下大恵(ひろしげ)さん(87)は隠れキリシタンの子孫だ。1814(文化11)年に建てられた自宅には、隠れキリシタンの祈りの部屋が「隠し部屋」として残る。山下さんは20歳の頃、しめ縄を年中つけているのはキリシタンではないと示すためだった、と父親から聞かされたという。
しめ縄を通年で飾る風習は、天草の北側の対岸に位置し、ともに「天草・島原の乱」の舞台となった長崎県・島原半島の島原にもある。島原市白土町で江戸時代から続く山崎本店酒造場でも、しめ縄は年の瀬に取り換えられる。
一帯にある江戸末期~昭和初期…