アプリ「みんなで翻刻」の開発中の画面。古文書の画像(画面右)に対応して、くずし字を翻刻できる(同左)
昔の地震について、くずし字で書かれた古文書を現代の文字に変換する作業を、市民の参加を募ってネット上で進めるアプリ「みんなで翻刻(ほんこく)」を京都大古地震研究会が開発した。地震の史料を読み解き、新たな事実を発掘する狙いだ。10日からウェブ(
https://honkoku.org/
)で公開している。
国内各地に残されている古文書には、過去に起きた地震の場所や日時、被害などが記されたものがあり、大地震の発生間隔や地域性を知る貴重な手がかりになる。ただ、活用するには古文書のくずし字を現代の文字に変換する「翻刻」が必要で、地震の研究者では対応が難しかった。
同研究会は、地域の古文書を解読している人や、翻刻に興味がある人の協力を得るためにアプリを開発。まずは、東京大地震研究所に所蔵されている「石本文庫」から、主に江戸時代の地震や災害を記録した古文書114冊分の画像を載せ、多人数が同時に翻刻できるようにした。くずし字の用例や熟語を学べる学習支援アプリとも連携しているほか、SNSを使って参加者同士で質問や回答をすることもできる。
同研究会を主宰する京都大の中西一郎教授(地震学)は、「地震計の観測データは100年ほどだが、古文書を読み解けば1千年までさかのぼることができる。地震の歴史を正確に理解し、防災意識の向上にもつながれば」と話している。(佐藤建仁)