天井からつり下げられたふたを開けると、もわっと蒸気が広がった=高松市牟礼町
志度湾に面した高松市牟礼町の老舗のカキ小屋「かまくら」が、今シーズンいっぱいで閉店する。地元だけでなく、県外の人にも愛されたカキ小屋を30年あまり営んできた店主は「さみしい気持ちもあるが、精いっぱいやってきた。閉店に悔いはない」と話した。
店主の鎌倉佳光さん(79)には忘れることができないつらい出来事がある。約50年前、当時2歳半だった長男が列車にはねられて亡くなった。自分の不注意のせいだと責めた。
その翌年、次男が生まれた。長男の生まれ変わりだと思った。2歳半しか生きられなかった長男の分まで、次男には好きなことをさせてあげたいと思い、野球が好きという次男を元プロ野球選手の岡村浩二さんが監督していた高松市内のリトルリーグに入れた。
そのころ、鎌倉さんはカキの養殖に取り組んでいた。岡村監督やチームの父母らをカキ殻をむく作業場に招き、カキ焼きをふるまったことがあった。自動車のホイールの上に鉄板を載せただけの焼き台だったが、「おいしい」と好評だった。岡村監督も「これは商売になる」と、その後も知人を連れてきてくれた。カキ小屋「かまくら」の始まりだ。
作業場になかったトイレをつく…