後半、先制ゴールを決める川崎・阿部(左)=関田航撮影
(17日、川崎1―0広島)
川崎の試合を動かしたのは、またもこの男だった。
0―0の後半11分、エドゥアルドネットの出した縦パスが、エウシーニョを経て阿部へ。ペナルティーエリアの外から左足で回転をかけた球は、GKの手から逃げるようにゴールへ滑り込んだ。ガ大阪から移籍1年目の攻撃的MFが今季5得点目。小林や中村ら以前からの主力を抑え、チームの得点トップに躍り出た。
川崎はリーグ上位の常連にもかかわらず、J1昇格以来、一度も主要タイトルを獲得できていない。昨季もJ1ではチャンピオンシップ準決勝、天皇杯では決勝でいずれも鹿島に敗れるなど、勝負弱さを露呈してきた。「うちには足りないハードワークができる選手。まっさきに獲得候補として名前が挙がった」(庄子ゼネラルマネジャー)のが、阿部だった。
ガ大阪で2014年にJ1、ナビスコ杯(現ルヴァン杯)、天皇杯の3冠に輝くなど“勝ち方”を知る阿部は言う。「内容が良くても、勝たないと面白くない。良くない時間にどれだけ全員が我慢できるか。3―0の必要はなく、1―0でいい」。その言葉通り、先制ゴールの後は守備にも駆け回った。仲間も阿部に引っ張られるように体を張り、広島の猛攻をしのいだ。
阿部が得点した5試合は4勝1分けと負け無し。ヒーローインタビューで好調の理由を聞かれても、「練習でやっている成果が出た」。謙虚な27歳が川崎の中心にいる。(清水寿之)