少年野球教室で子どもと交流する阪神の岩貞=昨年12月27日、熊本県益城町
■スコアの余白
ニュースで見た光景を目の当たりにする。このオフ、阪神の岩貞は地元・熊本に帰るのが少し怖かった。実際、熊本市東区にある育った家からほど近い益城町の姿は、知っているものと違った。屋根瓦が崩れた民家にはブルーシートがかけられ、道路はうねり、電柱は斜めに立っていた。
特集:スコアの余白
昨年末、一連の熊本地震で避難所になった益城中央小で、熊本県出身の荒木(中)や山中(ヤ)らと少年野球教室を開いた。プロ野球選手会とプロサッカー選手会合同の催しだ。岩貞も投げ方を助言し「子どもたちの顔を見られて、会話ができて、思っている以上に明るく元気な姿だった。ちょっと安心しました」。教えることよりも、交流できたことが心に残った。
昨季は4月14日に熊本で1度目の大きな揺れがあった2日後、本震があった日に先発した。直前まで「それどころじゃないのになあ」と迷いもあったが、7回無失点、10奪三振。地元の人たちから「勇気をもらったよ」と連絡をもらい、吹っ切れた。自分には「野球で明るいニュースを届けることしかできない」と。
熊本が被災地と呼ばれるようになってから、初めての帰郷だった。知っている道の両脇に、あったはずの家がなく、更地になった様子を見て「まだまだやるべきこと、できることは多いんだなと感じました」。2017年は、自らの勝利数か奪三振数に応じて、地元に寄付をする考えだ。