別居している母親に長女を会わせる約束を父親が守らないとして、応じない場合は父親が1回あたり100万円を母親に支払うよう命じる決定を東京家裁(棚橋哲夫裁判官)が出したことが分かった。別居中の親子が定期的に会う「面会交流」では、守らない親に裁判所が金銭の支払いを命じる「間接強制」の多くが数万円から10万円程度と言われており、異例の高額だ。
決定は昨年10月4日付。父親は決定を不服として東京高裁に抗告した。
決定などによると、父親は2011年に家を出た後、長女を小学校から連れ帰って転校させた。長女と会えない状態が続いた母親の申し立てで、東京家裁が15年12月、月1回5時間の面会交流を認めたが、父親は応じなかったという。
母親の間接強制の申し立てに対し、父親は「面会すれば母親が長女を連れ去る危険性がある」などと主張したが、同家裁は「もはや任意での実施を期待できない」と判断。父親の収入が高額であることなどを考慮し、約束を守らない場合の強制金の額を「1回100万円」とした。この決定の後、母親と長女の面会が実現したという。
家事事件の経験があるベテラン裁判官は「強制金を払ってでも会わせたくない、という人はいる。収入と比較してある程度負担にならないと強制にならない」と話す。母親の代理人の棚瀬孝雄弁護士は「裁判所が子どものためを考え、毅然(きぜん)とした態度を示した決定だ」と評価した。