仏像の引き渡しを命じる判決を受けて、記者団に感想を語る韓国・浮石寺の円牛住職=26日午前10時9分、大田地裁、東岡徹撮影
長崎県対馬市の観音寺から韓国人窃盗団に盗まれた仏像について、韓国の大田(テジョン)地裁は26日、仏像を保管している韓国政府に対し、韓国の浮石(プソク)寺に引き渡しを命じる判決を出した。仏像について浮石寺は14世紀に日本の海賊「倭寇(わこう)」に略奪されたとし、引き渡しを求めて提訴していた。
問題の仏像は、長崎県指定有形文化財「観世音菩薩坐像(ぼさつざぞう)」。2012年に盗まれ、13年に韓国で窃盗団が検挙された。仏像はその際、韓国政府に押収され、観音寺や日本政府は返還を要求。日韓の外交問題になっていた。浮石寺への引き渡しが命じられたことで日韓関係がさらに悪化するのは避けられなくなった。
訴訟では倭寇によって略奪されたかどうかが争われ、仏像の検証や専門家の証人尋問などが行われた。判決は仏像について「浮石寺の所有と十分に推定できる」と認めた。「正常でない過程」で対馬市の観音寺に移され、韓国政府は浮石寺に仏像を引き渡す義務があるとした。
一方、韓国政府も提訴される前の14年に専門家らを交えて仏像が日本に渡った経緯を調べたが、「倭寇による略奪の可能性は高い」としたものの、断定はしなかった。(大田=東岡徹)