棚田オーナー制度の主なタイプ
山あいの斜面に連なる棚田。その景観を守るために会費を払い、農作業などにも参加するオーナー制度が広がっています。収穫したお米がもらえるのに加え、地域の人たちや自然とのふれあいが魅力のようです。
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「耕作放棄地になりそうな棚田を借りて米づくりを始めました」。愛媛県大洲(おおず)市の読者から、こんな手紙が届いた。標高500メートルの山あいにある「樫谷(かしだに)棚田」で昨年からオーナー制度を始め、今年も2月末まで参加者を募っているという。
樫谷はわずか数軒の集落で、約250枚の棚田を耕作してきた。住民が減り、高齢化も進むなか、「天空のかくれ里」とも呼ばれる風景にほれた地域の有志らが、一部の田んぼを借りて米づくりに挑戦している。
手紙の主、樫谷棚田保存会の山口誠さん(67)は「始めたばかりだが、自分たちでつくっていく面白さもある」と話す。
農産物のオーナー制度は、生産者に一定のお金を出して、見返りに収穫物をもらう形が基本だ。棚田の場合、お米だけでなく、現地での農作業や交流を目当てに参加する人が多い。山や海に囲まれた斜面に様々な形の田んぼが連なる風景が多くの人を引きつける。
NPO法人「棚田ネットワーク」(東京)は、インターネットサイト「棚田百貨堂」で全国30府県、65地区のオーナー制度を紹介。それぞれの作業量やもらえるお米の量の目安も示す。年会費は3万円台が中心だ。実際に実施している地区はこれよりも多く、都道府県のホームページなどでも紹介されている。
不便な場所も多いが、農作業は都合がつく時だけでいいという条件なら、気軽に参加できる。本格的に米づくりをしたいなら、農家の指導を受けながら何度も通って作業するところも。自分や家族の希望を考えて、楽しく参加できる場所を選びたい。(山村哲史)
■石川・輪島「白米千枚田」
石川県輪島市の「白米(しろよね)千枚田」は、名前を書いた標柱を立てられるオーナーが年会費2万円、標柱のないトラスト会員は1万円で、それぞれ10kgと5kgの収穫米と山菜がもらえる。年7回の作業は都合がつくときに参加すればいい。募集は5月末までで先着順。輪島市観光課(0768・23・1146)。
■奈良・明日香「稲渕の棚田」
奈良県明日香村の「稲渕の棚田」は1区画100平方メートルで年会費4万円。農家の指導を受けながら主な作業を担い、収穫米40kgがもらえる。会費、面積が半分のビギナーコースや、担当区画がないトラストコースなどもある。3月末締め切り。明日香村地域振興公社(0744・54・9200)。
■京都・福知山「毛原の棚田」
京都府福知山市の「毛原の棚田」では、地元農家の指導のもと、オーナーが年間15日ほど作業する。年会費は1組5万円で、収穫は約120kg。締め切りは3月10日。田植えや稲刈りだけに参加する「体感ツアー」(各回大人2500円、子ども1000円)もある。福知山市大江支所(0773・56・1102)。
■愛媛・大洲「樫谷棚田」
愛媛県大洲市の「樫谷棚田」は、年会費が100平方メートルあたり3万円。収穫米のほか、地域で採れた野菜などがもらえる。作業は5月の田植え、7月の草刈り、10月の稲刈りの3回(必須ではない)。作業後の交流会のほか、自然観察会なども計画。2月末締め切り。大洲市農林水産課(0893・24・1727)。
西日本でオーナー制度に取り組んでいる棚田で、タイプが違うものを選びました。
(きりとりトレンド)