初めてジェリー・グレイさんに会った時、彼は路地から足早に出てきた。中肉中背で、颯爽と歩くジェリーさんは、とても60代の男性には見えない。彼は歩きながら、中国語で近所の人に挨拶をしていた。中国新聞社が報じた。
中国で暮らしてすでに16年になるというジェリーさんは英国北中部出身で、ロンドンの警察で10年間務め、28歳の時に移民としてオーストラリアに移住した。場所を変えて色々な土地で暮らすのが好きな彼は2004年に、英語教師の求人広告を目にしたのをきっかけに、広東省中山市にやってきた。
中山市の家でパソコンに向かうジェリーさん(撮影・孫秋霞)。
「中国に来る前は、中国は発展していない国で、手に入りにくい生活用品もあると聞いていた。そのため、初めて中国に来た時は、スーツケースに、シャンプーの大きいボトル2本とたくさんの石鹸を詰め込んで来た。しかし、到着してから全くその必要はないことに気づいた。中国のスーパーには僕が持って来た全ての物が並んでいるし、値段が安く、質もいい。本当に想定外だった」とジェリーさん。
ジェリーさんは、「中国に来たばかりの時は生活になかなか馴染むことができなかった。言葉の壁があるため、今の中国人の妻・梁鈺華さんと出会うまでは学校以外の人とは交流ができなかった」とした。
ジェリーさんと妻の梁鈺華さん(画像はジェリーさんが提供)。
「初めは中国に1年ぐらいだけ住む予定だった。16年も住むことになるとは予想もしていなかった」とするジェリーさんは今では中山市にしっかりと根を下ろし、「理解すればするほど中国が好きになる」と話す。
中国のスケールの大きい山河など自然が大好きなジェリーさんは、これまでにいろんな所に旅行へ行ったという。特に、ここ数年は、自転車で、南から北、北から南へと3回にわたる旅をして、厦門(アモイ)や福州、長沙、武漢、重慶など20都市以上を巡った。
2014年、自転車旅行をするジェリーさん(画像はジェリーさんが提供)。
そして旅の途中、ジェリーさんはオーストラリア人の観点から、中国で起きている変化を観察した。
新疆ウイグル自治区ウルムチ市から中山へ
数年で大きく変化する中国の景色
ジェリーさんは、早くから中国の貧困者支援計画について耳にしていたものの、新聞やインターネットの報道を時々見るにすぎず、身近な問題なく、自分にとっては遥か遠くで起きていることだと思っていたという。彼が貧困者支援を身近に感じるようになったのは、昨年のことだ。
2019年、ジェリーさんは妻と一緒に、中国西北部の新疆維吾爾(ウイグル)自治区烏魯木斉(ウルムチ)市から自転車で5000キロ離れた中山市まで、約2ヶ月かけて帰った。
ウルムチを自転車で出発するジェリーさん一行(画像はジェリーさんが提供)。
5年前の2014年、ジェリーさんは友人と、同じ道を通って、中山市とウルムチを往復した。その途中で甘粛省や寧夏回族自治区の貧困地区を通過したが、その道はガタガタで、自家用車はほとんど走っていなかったという。宿の環境も劣悪で、道沿いでは「窑洞」と呼ばれる洞穴式住居里に住んでいる人も見かけた。
甘粛省の窑洞。
しかし、2019年に再び同じ道を通って自転車旅行をした時、その状況が大きく変化していることに気づいた。
「昨年、再び寧夏回族自治区を通った時、道沿いに『窑洞』はまだあったものの、もう人は住んでいなかった。現地には学校や映画館、ショッピングセンター、レストラン、ホテルなどが建設され、道路もきれいに舗装されていた。わずか5年の間に、寧夏は雰囲気が大きく変わった」とジェリーさん。
2014年と2019年の寧夏回族自治区のある道のビフォーアフター画像(画像はジェリーさんが提供)。