富士重工業の吉永泰之社長(左)に要求書を渡す労働組合の山岸稔執行委員長=15日午前、東京都渋谷区、林紗記撮影
春闘の先導役となるトヨタ自動車など自動車大手の労働組合が15日、経営側に今春闘の要求書を提出し、労使交渉が本格化した。賃金体系を底上げするベースアップ(ベア)を、前年と同水準の「月3千円」要求。経営側も4年連続のベアに応じる方向だが、米トランプ政権の通商政策など懸念材料もあり、引き上げ幅が焦点となる。
15日午前、東京都渋谷区の富士重工業本社で、労組の山岸稔執行委員長が、月3千円のベアと6・2カ月分の年間一時金(ボーナス)を求める要求書を、吉永泰之社長に手渡した。山岸氏は「必死に努力してきた職場の思いを込めた」と述べた。
自動車とともに電機大手労組の多くも、16日に月3千円のベアを求める。3月15日の集中回答日まで交渉が続く。一時金では、ホンダや日産自動車の労組が前年を上回る要求を掲げる一方、トヨタ労組が昨年より0・8カ月分少ない6・3カ月分を求めるなど、ばらつきも出た。
トヨタ労組は、期間従業員の賃金では日給の150円の引き上げも求めた。要求書を受け取ったトヨタの伊地知隆彦副社長は「足元でも中長期でも経営状況は厳しく不透明だが、真摯(しんし)に議論したい」と話した。トヨタ傘下の部品メーカーも大手を中心に、15日中に要求書を提出する。
大手労組は4年連続のベア要求となったが、安倍政権が賃上げを求める「官製春闘」の勢いには陰りも見える。2016年は全国の消費者物価指数が4年ぶりに前年を下回り、自動車業界も円高の影響で減速局面に入った。保護主義を掲げるトランプ政権の政策次第では、さらに経営環境が厳しくなる可能性もある。