車いすで撮影に訪れた柳田かおりさん(左)。その笑顔と明るい声に、被災者の表情もほころんだ=熊本県西原村、平井良和撮影
熊本地震の被災者が住む熊本県西原村の応急仮設住宅団地の集会場に、住民や支える人たちの笑顔の写真が飾られている。「笑顔を見て、つらさや孤独に打ち勝ってほしい」と宮崎県の写真家が撮った。自殺まで試みた苦悩を、笑顔になることで乗り越えた経験を糧に、シャッターを切る。
「あらかわいい。お母さんと一緒でいいね」。西日が差し込む小森仮設団地の集会所で、宮崎県延岡市の写真家柳田かおりさん(39)が明るく声をかけながら、カメラを向けていた。
娘の珠里ちゃん(1)、鈴ちゃん(3)と一緒に笑顔で写真に納まった奥野美樹さん(39)は、自宅が全壊し隣町のアパートに住む。鈴ちゃんが一度「おうちにかえりたい」と言った。「この暮らしも楽しい思い出に変えてあげなくては」と思い、何げない日常までスマホで写真に撮って見せてあげるくせがついたが、気づけば自分は写ってなかった。この日、ママの笑顔の写真を見た鈴ちゃんに「ママ、かわいい」と言われて笑顔がこぼれた。
心を写す「写心家」を名乗る柳田さんは、各地で笑顔を撮っている。熊本地震後、被災者の力になりたいと村役場などに掛け合い、撮影会を実現させた。これまでに約50人を撮った。「自分の笑顔を自分で見たら元気が出る。魔法がかかる」と言う。
柳田さんは幼い頃から、周囲と…