日奈久断層が現れた部分に貼り付けられた布をはがす作業が行われた=28日午前10時34分、熊本県甲佐町、小宮路勝撮影
熊本地震を引き起こした活断層の一つ「日奈久(ひなぐ)断層帯」が現れた地層を保存して後世に伝えるため、熊本県甲佐町で28日、地層をはぎ取る作業が実施された。はぎ取られた深さ4メートル、幅2メートルの地層には過去の断層のずれが明確に残る。今後、博物館などでの展示・公開が検討される。
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作業が行われたのは、産業技術総合研究所の調査現場。全長約81キロの日奈久断層の北東部分にあたる。昨年4月の地震後に見つかった田んぼの地表のわずかなずれを頼りに、今年1月から地下を掘削し、現れた断層面を挟んだ地層を観察していた。約1万5千年前の最下層までに各年代の地層があり、断層を境にして左右が食い違っている。この「ずれ」は過去の地震で生じたとみられる。
現場で作業員が27日から1日かけて地層の表面に特殊な接着剤と布を塗り重ね、28日朝からスコップなどで布をはぎ取ると、地層もはがれた。作業を実施した地質調査会社から県に寄贈される予定で、今後、展示用に額装される。
はぎ取りの助言をした同県天草市立御所浦白亜紀資料館の長谷義隆館長(75)は「地震を体験しても、実際の断層面を見られる人は数少ない。多くの人の目にふれ、地震や自然災害への理解を深める利用を期待したい」と話した。(平井良和)