千葉県警は8日、養子をあっせんする民間団体「赤ちゃんの未来を救う会」(同県四街道市、昨年9月に解散)の元代表理事(32)と元理事(35)の男2人を児童福祉法違反の疑いで逮捕した。営利目的で特別養子縁組をあっせんした疑いが持たれていて、この容疑での摘発は全国初。
営利目的で養子あっせん容疑 団体元理事ら2人逮捕へ
東京都内に住む50代の夫と40代の妻は子どもに恵まれず、養子縁組を考えたが、夫が高齢という理由で自治体や他の民間団体にあっせんを断られた。ただ、救う会からは「養育に問題がないと判断した場合に限り、50歳以上でも可能」との説明を受けた。夫婦は「優先的にあっせんを受けられる」と言われ、昨年4~5月、計225万円を救う会に支払った。
その後、ベビーベッドやおむつを買い、助産院で授乳や沐浴(もくよく)の研修も受講。6月には乳児を引き取り、親や親族に紹介した。ところが生みの親に「最終的な同意がない。子どもを返してほしい」と言われ、翌月、生みの親の元に戻した。あっせんが成立せず精神的な苦痛を受けたとして、救う会に慰謝料など約600万円の損害賠償を求める訴訟を千葉地裁に起こした。
児童福祉法は営利目的の養子のあっせんを禁じている。厚生労働省は都道府県などに対し、事業者が養親希望者から受け取ることができるのは交通費などの実費以下とさせるよう通知。金品の支払いであっせんの優先度が決まったり養親が無理な支出を強いられたりと、子どもの命を売買するような形にしないためだ。
逮捕された救う会の元理事は、他の団体があっせん事業をするのを知って15年5月、県に届け出て事業を始めた。それまでパチプロやITコンサルタントをしていたという。昨年11月、朝日新聞の取材に「出産費用や人件費などにお金がかかる。赤字だったが、営利目的と言われれば仕方がない」と話した。
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〈特別養子縁組〉 望まない妊娠や虐待などで生みの親のもとで暮らせない原則6歳未満の子どもと、血縁関係のない夫婦が法的に親子になる制度。1988年に施行された。普通養子縁組と異なり、生みの親との法的関係がなくなり、戸籍上も育ての親(養親)の実子として扱われる。
養子縁組をめぐっては、2013年に一部の団体が養親希望者から不透明な寄付金を受け取っていることが問題となり、厚生労働省は自治体に、事業者への指導を徹底するよう通知した。昨年12月には悪質な事業者の排除を目指す新たな規制法が成立。あっせんに必要な手続きを初めて定めたほか、届け出制から許可制に変え、無許可には罰則が科せられるようになる。
厚労省によると、15年10月時点で22団体が都道府県などに事業を届け出ている。14年の成立件数は513件。