かさ上げ工事が進む岩手県陸前高田市=2月14日
東日本大震災の被災地に寄せられるふるさと納税。震災後も全国からの寄付は途絶えることがなく、震災があった2011年度の総額を上回る自治体もある。また、東京電力福島第一原発事故の影響などで独自に返礼品が準備できない自治体にも寄付が集まっている。
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ふるさと納税は自治体に寄付すると国への所得税や住まいがある自治体への住民税が軽くなる制度。岩手、宮城、福島3県の沿岸や原発事故で避難指示が出された42市町村のうち、年度ごとの寄付額を比べると、16年12月末現在で既に11年度を上回る自治体が30あった。
増額率が最も高かったのは福島県飯舘村の595倍。全村避難し特産品をつくれないため、15年12月に他の自治体の名品を贈る制度を始めたところ、寄付が急増。11年度は37万円だったが、16年12月末現在で2億2千万円に増えた。村では感謝の気持ちとして、飯舘産イチゴが入った紅茶を寄付者に配るよう、準備を進めている。
最も寄付件数が多かったのは岩手県陸前高田市で1万8743件。震災の影響で14年度までふるさと納税制度を休止していたが、徐々に特産品などの生産態勢が整ってきたことから、15年7月に再開。海産物のほか、地元産リンゴを使ったジュースやジャム、ブランド米「たかたのゆめ」など200あまりの返礼品を用意している。
原発事故の影響で返礼品の用意がないのは福島県の富岡町、大熊町、双葉町と岩手県田野畑村の4自治体。他の自治体と比べて寄付額は少ないものの、16年12月末で富岡町と双葉町には500万円近く、田野畑村には600万円近い寄付が集まっている。
ふるさと納税による寄付金は、震災からの復興をめざす自治体にとって貴重な財源で地元の産業を支えている面もある。一方で、商品券など金銭に近い返礼品が地域自治体への応援という趣旨から逸脱しているという批判もある。政策研究大学院大学の井川博教授(地方自治)は「金銭的なメリットが少なければ問題はないが、見返りを求めないことが本来の趣旨。被災地といえども、過度な競争は避けるべきだ」と指摘する。
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ふるさと納税額は15年度分までは総務省が各自治体からの情報を元に公表。16年度の12月分までは42市町村に取材し、集計しました。