食品見本市で柿の葉を使ったお茶の説明をする平井宗助さん(左)=千葉市
奈良の郷土料理・柿の葉ずしの老舗、「柿の葉ずし総本家平宗(ひらそう)」(奈良県吉野町)の社長が、3月末で退任する。柿の葉を使ったお茶などを製造販売するビジネスを立ち上げるためだ。高齢化や耕作放棄といった窮状に悩む地元の柿園を活性化させたいとの思いからだ。
3月上旬、千葉県の幕張メッセで開かれた国際食品見本市。「香りが独特でしょう。栄養価も高いですよ」。柿の葉をブレンドした緑茶を試飲する食品業界の外国人らに、平宗社長の平井宗助さん(46)が説明していた。
アメリカで富裕層向け商品を扱う商社からは取引を申し込まれた。「重量のあるすしとは違い、柿の葉なら海外に販路を求められる」と話す。
平宗は幕末の1861(文久元)年創業。今では東京・丸の内や大阪などに16の直営店を展開する、業界大手の一つだ。平井さんはその10代目。大学卒業後、東京のホテルに就職。26歳で家業に入り、6年前に社長に就いた。
奈良県は柿の生産量で全国2位だが、柿の葉ずしに使う柿の葉は大半が輸入されたものだ。地元の柿の葉の割合を増やそうとしたが、コスト面などから断念した。その代わり、すし以外に活用することを思いつく。高齢化や後継者不足に悩み、耕作放棄地が広がる現状を改善できるかもしれないとも考えた。
柿の葉はポリフェノールが豊富…