大川小津波訴訟の控訴審で、仙台高裁に向かう遺族ら=29日午後、仙台市青葉区、時事
東日本大震災の津波で児童74人と教職員10人が死亡・行方不明になった宮城県石巻市立大川小学校をめぐる損害賠償請求訴訟の控訴審が29日、仙台高裁で始まった。市と県は「津波は予見できなかった」と改めて訴え、計約14億円の賠償を命じた一審・仙台地裁判決の破棄を主張。遺族側は、遅くとも地震発生から24分後には予見できたと述べた。
大川小訴訟、14億円賠償命令 津波襲来「予見できた」
特集:大川小学校津波訴訟
次女を失った紫桃(しとう)隆洋さん(52)は、「なぜ、裏山に逃げなかったのか。答えを見つけない限り、娘にかける言葉が見つけられない」と意見陳述した。遺族側の代理人弁護士によると、閉廷後の非公開の進行協議で裁判官は、各学校の危機管理マニュアルの整備状況について、市側に書面で説明するよう求めたという。弁護士は「学校の平時の防災体制が控訴審の争点になる可能性が高い」と話した。
一審判決によると、地震発生の約50分後、児童と教職員らは、校庭から150メートルほど先にある川そばの「三角地帯」(標高約7メートル)に向かい津波に襲われた。判決は「広報車の呼びかけで、津波襲来の7分前には予見できた」と認定。すぐそばの裏山に逃げるべきだったとした。
遺族と、市・県の双方が控訴した。市と県側は「広報車の呼びかけが教職員に聞こえたかは分からない」と主張。遺族側は、遅くとも大津波警報の発令を伝える2回目の防災行政無線が流れた午後3時10分には予見できたとしている。(桑原紀彦)