関西電力高浜原発の3号機(手前右)と4号機。奥は1号機(右)と2号機=28日午前10時54分、福井県高浜町、朝日新聞社ヘリから、伊藤進之介撮影
関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)について、大津地裁が出した運転差し止め仮処分決定に対し、大阪高裁(山下郁夫裁判長)は28日、運転再開を求めて保全抗告した関電側の訴えを認め、決定を取り消した。
高浜3、4号機は仮処分決定を受けて運転を停止していたが、関電は今後、再稼働に向けた手続きに入るとみられる。
大津地裁には2015年1月、福井県に隣接する滋賀県の住民29人が、3、4号機の早期の再稼働が見込まれるとして、運転差し止めを求めて仮処分を申請していた。
16年3月の大津地裁の決定は、争点の一つだった原発の安全性をめぐる立証責任について、本来は住民にあるとしつつ、「多くの資料を持つ電力会社側にもある」との考えを示した。
そのうえで、東京電力福島第一原発事故の原因究明が「道半ば」の状況で作られた国の新規制基準(13年7月施行)を安全性の根拠とすることを疑問視。新基準を満たしただけでは安全性は不十分と指摘した。
さらに関電の過酷事故対策についても検討。高浜原発付近の断層の調査は尽くされておらず、電力会社が耐震設計の基本とする揺れの大きさ(基準地震動)に十分な余裕があるとは言えないと指摘した。
これらを踏まえ、平穏で健康な暮らしを求めて訴えた住民の人格権を侵害する恐れが高いと結論づけた。
一方、大阪高裁に保全抗告を申し立てた関電は、新基準について「福島の事故の教訓を生かして地震や津波の想定を厳格化し、事故につながる事象を網羅的に検討したものだ」と反論。大津地裁は過小評価しており、独自の観点で抽象的な危惧と不安を述べたものに過ぎず、不当だと訴えていた。
仮処分は暫定的な法的措置を求める手続きのひとつ。今回の仮処分申請とは別に、近畿の住民らは13年12月、高浜3、4号機を含む計11機の原発の運転差し止めを求める本訴も大津地裁に起こしており、係争中となっている。