宅配便最大手のヤマト運輸が、「当日配送」を縮小する方向でネット通販大手のアマゾンと交渉していることがわかった。ドライバーの長時間労働問題の改善に向け、扱う荷物量を抑える狙いがある。料金など交渉で合意した内容は、配達の速さを軸にサービスを競ってきた通販業界に大きな影響を及ぼす可能性もある。
■「サービス見直し」話し合いも
ヤマトはドライバーの待遇改善に伴う費用増に備え、アマゾンと本格的な配送料金の値上げ交渉に入った。関係者によると、併せてサービスの見直しも話し合っている。「当日配送」も対象で、関東、中部、関西の各地方で大幅に減らしたい考えだという。
ヤマトは今年の春闘で、手厚い宅配サービスを見直すことで労働組合と合意済みだ。夜間の作業負担を減らすため、6月中に「午後8~9時」の配達時間帯指定を廃止し、「午後7~9時」を新設する。夜間に配る荷物が集まりやすい「当日配送」の維持は、厳しくなるとみられていた。
ヤマトにとって、アマゾンの荷物の抑制は最重要課題だ。昨年度に運んだ宅配便は約18・7億個で、過去最多を更新。この5年間で3割も増えた。佐川急便が提携を打ち切ったアマゾンから2013年度以降に多くの荷物が流れてきたことが影響している。
一方、アマゾンの「当日配送」は、宅配大手では人手に比較的余裕があるとされる日本郵便も担っている。ヤマトが手放した荷物は日本郵便が引き受ける見通しだ。ただ、ヤマトに比べて集配拠点が少なく、「安い価格では運ばない」(幹部)と値上げを示唆する声も出ている。「当日配送」が維持されても、対象となる地域や商品の範囲が縮小されたり、利用者の費用負担が増したりする可能性がある。(石山英明、内藤尚志)