モスクワで12日、記者会見を終えて握手を交わすロシアのラブロフ外相(右)とティラーソン米国務長官=AFP時事
ティラーソン米国務長官はトランプ政権閣僚で初めてロシアを訪れ、12日、モスクワでラブロフ外相、プーチン大統領と相次いで会談した。関係改善の必要性で認識は一致したものの、シリア情勢をめぐって、主張は平行線をたどった。
ティラーソン氏はラブロフ氏と昼食を挟み約5時間、プーチン氏と約2時間にわたって会談。米国がシリアのアサド政権が化学兵器を使用したと断定し、シリアをミサイル攻撃したことが議論の中心になった。会談後の記者会見でティラーソン氏は「我々の持つ証拠は決定的だ。非常に自信がある」と主張。アサド政権がこれまで50回以上、化学兵器を使用したとも指摘した。
一方で、米軍のミサイル攻撃を「違法」とするラブロフ氏はアサド政権の関与を否定。「中立的で客観的な調査を望む」とした。
ロシアが支援するアサド政権の存続についても溝は埋まらなかった。ティラーソン氏は「アサド一家による治世が終わるのは明らかだ。自らの行為が招いた」と批判。「ロシアはその現実をアサドに認識させる手段を持っている」とロシア側に対応を求めた。
一方、ラブロフ氏はイラクやリビアなどで独裁政権が打倒された後に混乱が広がっていることを指摘。「特定の個人を排除することは我々の予定にない」と反発した。
ただ、米ロ関係の改善のための両外交当局者による作業部会を立ち上げることや、シリア上空での米ロの偶発的な衝突を避けるための連絡態勢の再開では合意したという。
また、ワシントンで会見したトランプ大統領も「ロシアとは全くうまくいっていない。もしかしたら、ずっと低調かもしれない」と述べた。ミサイル攻撃も「疑いなく、正しいことをした。非常に成功だった」と自賛した。さらに、化学兵器使用を事前にロシアが知っていた可能性も「ありうる」と踏み込んだ。(モスクワ=杉山正、駒木明義)