作家マルセル・プルースト
口ひげにコート姿の男は20世紀を代表する文豪だ――。大長編小説「失われた時を求めて」で知られるフランスの作家マルセル・プルースト(1871~1922)が動く映像が確認されたと、カナダの研究者が仏の雑誌に発表した。写真ではその姿が知られていたが、映像では初めてという。古典的名著の着想の一端を知ることができる貴重な資料となる。
映像は1904年11月、パリの教会であったプルーストの友人の結婚式を映したもの。35ミリフィルムに収められ、約1分10秒の無音で、パリ郊外の仏国立映画センターに保存されていた。カナダのラバル大学のジャンピエール・シロワトラアン教授(映画学)が、このフィルムに映る、新郎新婦らとともに教会の階段を足早に下りていく男性をプルーストと確認。今年2月、仏プルースト専門誌「ラルビュ・デチュードプルースティエンヌ」で、明らかにした。
決め手はファッション。男性招待客のほとんどが黒のジャケットとシルクハットという正装で身を固めているのに対し、明るめの色のコートを羽織り、丸みを帯びた山高帽をかぶっている。
このひときわ目立つ服装はプルーストが着ていたものの特徴と合致することから、同教授は「外見上から見てほぼ間違いない」と話す。映像の存在自体は、専門家の間で知られていたが、プルーストの手紙や当時の新聞に掲載された招待客らのリストなどからこの結婚式に参加していたことも裏付けられた。
また映像では、プルーストが貴族が通るじゅうたんを避けて歩く様子が見て取れる。「他人と自分は違うということを周囲に強調する彼のスタイルだ」と同教授。
当時33歳のプルーストは、英…