オリジナル曲「浦学サンバ」を演奏する浦和学院の吹奏楽部
高校野球のもう一つの主役、応援。迫力ある演奏をグラウンドへ届ける吹奏楽部は映画の題材にもなり、近年注目を集める。そんな高校生吹奏楽部による応援曲だけのコンサートが9日、東京・NHKホールであった。満員の観客を前に奏でた応援曲の数々は、「紅白歌合戦」の舞台を甲子園へと変えた。
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曲に合わせてメガホンが揺れる。「ブラバン!甲子園ライブ1都3県編」と題したコンサートで演奏したのは横浜(神奈川)、日大三(東京)、拓大紅陵(千葉)、浦和学院(埼玉)の4校。学ラン姿の応援団員やチアリーダーも加え、総勢457人による巨大ライブだ。
企画したキョードー東京の山崎芳人社長(69)は「私も50年前はブラバン少年。ポール・マッカートニーの招請などをやっていますが、原点はブラスバンドです」。同社は1966年のビートルズ日本公演など、国内外の有名アーティストによるコンサートやミュージカルを主に手がけてきた。高校生のコンサートに携わるのは今回が初めてだったという。
そこで、高校野球の吹奏楽応援の著書もあるライターの梅津有希子さん(41)に協力を依頼した。「野球寄りがいいのか、吹奏楽がうまい学校がいいのか悩みました」と梅津さん。野球好きが来場すると信じて、野球が強く、オリジナル曲が多い学校を選んだ。
コンサートは対戦形式で進んだ。「第1試合」は拓大紅陵と浦和学院。両校は因縁がある。拓大紅陵はレパートリーの大半がオリジナル。その一つ「チャンス紅陵」は全国の高校で使われている。浦和学院も許可を得たうえで「怪物マーチ」と名前を変えて演奏している。熱戦は延長十五回、引き分けに終わった。
「第2試合」は夏の甲子園を複数回制した経験のある横浜と日大三の対戦。男子校の横浜は力強い音色で伝統の「第五応援歌」を披露。日大三は全国の高校に広がっているオリジナル曲「come on!!」をOB、OGを含めた大編成で熱演し、こちらも延長十五回、引き分けだった。
コンサートの最後は、今春の選抜大会で行進曲に選ばれた星野源の「恋」を4校合同で演奏した。日大三の志村光太郎部長(3年)は「他校の応援の仕方、伝統を学べていい経験になった」。拓大紅陵の安永涼乃部長(3年)も「熱気が違った」と流れる汗をぬぐった。
今回は関東地区だったが、今後は他地区での開催も検討中だ。「私たちの仕事はライブ。若い人たちが舞台に上がることで、成長、そして音楽の発展につながればと思っています」と山崎社長。まさに「応援の甲子園」となることを思い描いている。(山下弘展)